【福祉医療マネジメント研究科】東京都社会福祉協議会 高齢者福祉施設協議会 研修講師を務めました
2025年1月20日(月)中央区立特別養護老人ホーム マイホーム新川にて、東京都社会福祉協議会 高齢者施設福祉部会 2024年度 中央ブロック会施設長会における研修が開催されました。当研修では、研究科委員長 亀川雅人教授が講師を務め、「学び続けることの大切さ~人的資本の形成と組織の価値~」というテーマでおよそ1時間の講演を行いました。講義の要旨は以下の通りです。
環境変化と既存価値の揺らぎ
人は先人の知恵や経験に基づき生活をしているが、環境が変化すると、これまでの常識や技術の価値が失われる。現在は、これまでに経験したことのない急激な環境変化に直面しており、既存の知識や技術では対応できない状況にある。グローバリゼーションとその反動となる保護主義、新型コロナウイルスのパンデミック、地震や風水害の増加、情報社会におけるハッカーや虚偽情報、生成AIの急激な成長による産業変化、そして、少子高齢化といった社会の構造変化が生じている。
こうした環境変化は、既存の人的資本の価値を減耗し、新たな価値創造が求められる。営利企業は、経営者が将来環境を先読みし、新たな戦略を策定することで生き延びようとするが、法令や規制に縛られる福祉医療の非営利法人は、自由で柔軟な戦略が策定できず、人的資本の価値が知らぬ間に陳腐化する。政府が規制を変化させるときには、対処すべきタイミングを逸している可能性があり、人と人が繋がることで価値を有する組織の価値が消滅する。
社会人の学びと価値再構築
社会人の学びは、社会と組織を存続させるために必要不可欠な価値の再構築過程であり、常に新たな環境に対応できる準備のプロセスである。何が問題であるかを発見し、その解決策を自らが練り上げねばならない。それは、経営者や管理者のみならず、働く人々のすべてが自主的に身につけねばならないマネジメント力である。
社会人の学びは、文字情報となった教科書やウェブ検索では不十分であり、環境変化に対応するプロセスで、問題を発見するアンテナを身に着け、正解のない試行錯誤的な解決策にチャレンジすることが求められる。しかし、各自が受信するアンテナには限界がある。他者の知識や経験の異なる社会人同士が膝を交えて議論することで、発見すべき視野は広がり、多様な解決策が浮かび上がる。他者から謙虚に学び相互の知識や技術を繋ぐことで、組織の価値が創出される。それが、社会人の学びであり、知的欲求を満たすことで社会に貢献できることになる。
福祉医療と学びの未来
福祉医療分野に携わる人の知的欲求が、マネジメント力を習得し、組織の生産性を高めることができれば、社会は延命できる。それは、同時に各自の社会的な位置づけを理解する自己発見となる。大学院の学びは、社会における各自の役割を認識することでもある。学ぶことなしには、持続可能な福祉医療の社会は構築できない。
当日は、会場とオンライン合わせて計10名の施設長が参加し、みなさん熱心に取り組まれ、多くの質問が寄せられるなど、活発な意見交換が行われました。