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【福祉医療マネジメント研究科】第1回公開セミナー実施報告「いま望まれる幼児教育のあり方と幼稚園経営―STEAM保育・英語活動・インクルーシブ保育を軸に」

2025.06.27

2025年6月7日(土)に文京学院大学本郷キャンパスにて、第1回公開セミナー「いま望まれる幼児教育のあり方と幼稚園経営―STEAM保育・英語活動・インクルーシブ保育を軸に」が開催されました 。

■本学人間学部児童発達学科教授・ふじみ野幼稚園 園長 柄田毅先生による基調講演 「インクルーシブ保育を高める多領域専門性の枠組み」
柄田毅先生は、インクルーシブ保育とその専門的枠組みについて講演しました。インクルーシブ保育とは、すべての子どもが幼稚園等で仲間との「相互作用」を通じて成長・発達する取り組みです 。現代社会の理念と発達理解を基盤とし、幼児の理解とニーズに応じた「関わり合い」や地域との「連携」が必要とされます 。特に、保育を担う専門性として、多くの専門領域に関する基礎的理解の向上が求められます 。
講演では「インタラクション」をキーワードに、子どもの成長・発達に関わるすべての人とつながり合うことが強調されました 。インクルーシブは「すべてを含んでいるさま」を意味し、SDGs目標4やサマランカ宣言を通じて注目されています 。幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎であり、集団生活やコンピテンシー(生きる力)の獲得が重要です 。知識の習得には仲間や相手が必要であり、3〜5歳ごろの連続性の中で知識・技能・思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性など社会的交流の力を習得することが大切です 。
アクティブラーニングが重視され、様々な領域で子どもの支援計画作成が求められています 。障害の有無に関わらず、個別のサポートが必要な子どもへの対応も必要であり、インクルーシブ教育はこれからの教育の柱として位置づけられます 。子ども一人ひとりを育てるためには、様々な領域間の「インタラクション」が重要です 。

出典:柄田毅「インクルーシブ保育を高める多領域専門性の枠組み」2025.6.7

■文京幼稚園 園長 益田薫子先生による講演 「保育と「英語活動」について」
益田薫子先生からは、文京幼稚園の特色と英語活動についてお話しいただきました 。文京幼稚園は開園当初から3年保育を実践し、昭和30年代前半から「英語活動」を継続しています 。学年ごとにチーム保育を行い、好きな遊びを中心とした保育を取り入れています 。
英語活動は園全体で実施されており、カナダ人ネイティブ講師が各クラスで学年に応じた時間と回数で行います 。活動内容は、歌での挨拶、日付・曜日の確認、ABCソング、出席確認、BIG BOOK読み聞かせなどです 。この活動の目的は、単に英語を覚えさせたり話せるようにすることではなく、子どもたちが英語に興味を持ち、国際的な感覚を自然に養い、発言することで自信を育むことを重視しています 。
文京幼稚園では、英語を学習としてではなく「遊びの延長線上」と捉え、子どもが「やってみたい」と意欲を持てるよう工夫しています 。担任もティームティーチングの形で活動に関わり、視覚教材を活用することで、子どもの興味を引きつけ、達成感を得られるようにしています 。

 

■学校法人アゼリー学園 浦安幼稚園 園長 山崎恭子先生による講演 「こどもの成長を支える遊びと体験、現代的アプローチ〜現代的アプローチとしての探究・STEAM保育・自然体験〜」
山崎恭子先生は、浦安幼稚園の探究学習、STEAM保育、どろんこ遊び、複合的な体験、子どもたちの変化と成長についてお話しいただきました 。
探究学習は、子ども自身が「なぜ?どうして?」を追求する学びであり、自主性・思考力・表現力を育みます 。子どもの興味・関心を尊重し、結果よりも過程を重視します 。実体験から学び、保育者は「共に考え、支える人」として環境づくりや問いかけを行います 。
STEAM教育は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字をとったもので、「発見・探究・創造性を重視する学び」です 。
どろんこ遊びは、五感を使った体験が脳と身体を育み、心の安定や自己肯定感を高めます 。自然に触れることで不安を減らし、気持ちを落ち着かせます 。感覚統合の発達にもつながり、運動神経の土台を築きます 。
これらの探究学習・STEAM教育・どろんこ遊びの複合的な体験は相乗効果を生み、「生きる力」を育みます 。結果として、子どもたちの変化と成長として以下の6点が挙げられました 。

  1. 自己肯定感の向上
  2. 創造力と問題解決力
  3. 協働力・対話力・社会性
  4. 探究心と継続力
  5. 感覚と感覚統合
  6. 非認知能力の育成

■本学人間学部児童発達学科教授・ふじみ野幼稚園 園長 柄田毅先生による講演「インクルーシブ保育を推進する国際理解教育の取組み」
柄田先生は、パネルディスカッションのまとめとして、文京学院大学ふじみ野幼稚園での取り組みについて話されました 。ふじみ野幼稚園ではインクルーシブ保育を推進しており、国際理解教育として子ども英語教育センターと連携し、English Timeを行っています 。英語での挨拶や歌・ダンスを通して、英語を身近に感じ、楽しさや面白さを体感できるよう遊び的要素を多く取り入れています 。カブリヨ大学との交換留学生による保育体験実習や「英語であそぼう」を通じて、子どもと保護者の交流機会を設けています 。2歳児クラス「いちごクラブ」でも英語をテーマにした活動を行っており、国際理解を遊びや体験を通して学ぶことを大切にしています 。

約2時間にわたる基調講演とパネルディスカッションにご参加いただき、誠にありがとうございました。オンラインの不具合によりご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。皆様の熱心なご参加に心より感謝申し上げます。
今回はハイフレックス形式(オンラインと対面)でのセミナーとなりました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます 。

福祉医療マネジメント研究科 鳥羽美香