においの強さ評価に「共通の物差し」が存在する可能性を実証 — 人間学部 小林剛史教授らの研究が『Japanese Psychological Research』に掲載されました
人間学部心理学科の小林剛史教授ら研究グループは、従来から研究者が用いてきた「6段階臭気強度スケール(VASを取り入れた改良版)」を用いた評価において、参加者が共通の基準(物差し)に基づいてにおいの強さを判断している可能性を示しました。本研究成果は、日本心理学会が発行する英文ジャーナル『Japanese Psychological Research』に掲載され、国内外の研究者に公開されています。
【研究の背景】
においの強さの知覚は、人の感情や行動に直結する重要な感覚です。従来、心理学や嗅覚研究では「6段階臭気強度スケール」が広く用いられてきましたが、その評価が個々人の主観的な基準によるのか、それとも共通の尺度に基づくのかは明らかではありませんでした。
【研究の成果】
・改良版6段階スケールを用いた実験で、異なる条件の参加者間で同じ濃度のにおいに対する強度評価が統計的に差がないことを確認。
・この結果から、少なくとも今回用いたにおい刺激においては、参加者が共通の「物差し」で強度を評価している可能性が示されました。
・におい研究において、より比較可能で信頼性の高い評価の枠組みを支える知見となります。
【今後の展望】
この成果は、においの強さを「共通の基準」で測定できる可能性を裏づけるものであり、嗅覚研究の精緻化や国際的な比較研究に役立つと期待されます。食品や環境、健康領域での応用にもつながる可能性があります。
【論文情報】
・論文タイトル:Perceived Odor Intensity Ratings Based on Absolute Scales of Evaluators: Application of a 6-Point Odor Intensity Scale Approximating the Visual Analogue Scale (VAS)
・著者:Kohei Fuseda, Sachiko Saito, Takefumi Kobayashi
・掲載誌:Japanese Psychological Research(日本心理学会英文ジャーナル)
・DOI:https://doi.org/10.1111/jpr.12611
人間学部 小林 剛史教授
専門分野 : 生理心理学、行動薬理学、認知心理学、神経科学